テニスの中級者ならばある程度スライスサーブを打てる人が多いです。しかし、上級者のスライスサーブと比べるとキレに差があることがほとんどです。「ワイドに切れて行くスライスサーブ」や「ボディに食い込むスライスサーブ」を打てるようになりたいですね。
スライスサーブの切れを高めるコツについて紹介します。
*スイングをして、ボールにしっかりとスピンやスライス回転をかけられるようになったら、ポリエステルのいろいろなストリングス(ガット)を試してみましょう!ゲージを細くするだけでも、ボールへの食い込みが変わってきます!
スライスサーブのキレの差はインパクトにある
テニスではラケットでボールを打ちますので、スライスサーブのキレの差はインパクトにあるということはある意味当然です。ボールがラケットに接触する僅かな時間に、どのようにラケット面がボールに当たり、どのような回転と反発力を与えるかでボールの飛び方が変わるからです。
だからといってインパクトの時にラケットを操作しようとしてもほぼ不可能です。インパクトの時間は0.005秒程度の短い時間ですので、その間に人間の意思でラケットを操作するなんてできないからです。
人間にできることは、ラケットのスイング軌道を適切なものにして、その軌道の中の適切な打点でボールを打つことです。スライスサーブについて言えば、まずスライスサーブを打つための正しいスイングを習得し、そのスイング軌道の中の正しい打点でボールをインパクトしましょう。
そうすると次に必要なことは、「スライスサーブを打つための正しいスイングとはどのようなものか?」ということになります。スライスサーブは、スイング方向とボールが飛ぶ方向がずれています。一般に「ボールを横を切るように打つ」という指導がされることもあります。これらがスライスサーブの適切なスイングの習得を妨げることにもなります。
回転がかかりすぎてサーブの軌道が安定しない方、「カシュッ」という感じのインパクトになってスピードが出ない方は、まずはフラットサーブのスイングをしてみましょう。次にそれを基準にスイング方向を少しずらします。右利きならば少し左にずらし、左利きならば左にずらします。
最初はどのぐらい打ちたい方向に対してスイングの方向をずらせば良いのかよくわからないでしょう。デュースサイドからのサービスで、反面の中央よりも少しセンターよりからサーブをする場合、相手コートのセンター方向にスイングしてワイドに切れていくスライスサーブを打つイメージからスタートすれば良いでしょう。その後、自分のサービスを打つ時の位置、スライスサーブのキレ(曲がり具合)などから微調整しましょう。
このようにスイングそのものは、少しボール方向に対してずれるだけで、それ以外はあまりフラットサーブと変わりません。インパクトでの面の向きが大きく異なるのですが、スイングはフラットサーブのようにしっかり振り切ることがキレを生み出すために重要です。
キレのあるスライスサーブのためのインパクト
正しいスイングを習得するために、テニスの動画を何度も観ることは有効です。通常のスピードとスローモーションと両方見た方が良いです。通常のスピードでは動きが速すぎてよくわからないですし、スローモーションでは実際のリズムが良くわからないからです。
しかし、それを自分のスイングとして習得していくためには、実際にラケットを振った時に身体の各部分とラケット、特にラケット面がどのように動いているのか、自分で確認していくことが必要です。そしてそれを自分の言葉で表現してみると、理解が深まり、スイングの習得に役立ちます。
動画を観ても、それだけで動きを完璧にコピーできる人はほとんどいません。アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)の選手やダンサーのように、ある動きを見て、すぐにそれを完全にコピーするような練習を長年やっているような方は、動画を観ただけでもかなり動きを真似できますが、ほとんどの人はそう簡単にはできません。やはり、前述のようなプロセスが必要です。
言葉のイメージというものも人によって解釈にさがあります。コーチから「ボールの横側を切るように打つ」というよくあるアドバイスでキレのあるスライスサーブを打てる人もいますが、そのアドバイスではかすれたスライスサーブになってしまう人も少なくありません。
物理の授業のように、インパクト前後でラケット面がどのように動いて、どのようにボールに当たるのかを客観的にイメージすること、理想的なインパクトにするために何に注意して打てば良いのかをチェックすることで、言葉によるアドバイスからのズレを修正することができます。
物理的に正しいイメージは、インパクト前後のスイング方向に対し、ラケット面が斜めになっていること、ボールにスピードを与えるのはスイングスピードであり、ある程度厚く当てないと力が伝わりにくいことです。
「ボールの横側を切るように打つ」アドバイスの悪影響は、いわゆる「リンゴの皮むき」的なインパクトになり、ボールに力が伝わり難くなることです。かすれたスライスサーブになってしまう方は、むしろ「スイング方向をずらし、フラットサーブの打ち方で、ラケット面が斜めに当たる」というイメージに修正した方が切れが出て、サーブの軌道も安定するでしょう。
ラケット面が斜めに当たるだけで、スイング方向とボールの飛ぶ方向にズレが生じるのは、前述の物理的なイメージで明らかです。センター方向にスイングしてワイドにボールが飛ぶようになります。後はインパク時の面の角度の調整で、飛ぶ方向を調整できます。
また斜めに当たることで自然に回転もかかりますし、しっかり厚く当てることでスピードも出ます。この2つ効果によってキレが生まれます。
スライスサーブのキレを高めるためのコツ
「思ったよりもスライスサーブのキレが出ない」、「イメージよりもスライスサーブがワイドに行かない」という方は、以下に2つのコツを紹介しますのでお試しください。
薄いグリップにする
「リンゴの皮むき」にならないようにしっかり厚く当てようとすると、今後はフラット気味のサーブになってあまり曲がらなくなったり、スイング方向とボールの飛ぶ方向のズレが少なくなってしまうことがあります。
前述のような物理的イメージ(ラケット面とボールが当たる状況)を考えればこの原因は明らかです。それはインパクトでラケット面がスイング方向に対し直交に近くなってしまっているためです。もっとラケット面がスイング方向に対して傾いていなければなりません。
これはフラットサーブやフラット気味のスライスサーブを打てる人に多いパターンです。フラットサーブでは、プロネーションを使ってインパクト時にラケット面がボールに垂直に当たります。スライスサーブでもスイングがほとんどフラットサーブと同じなのですが、プロネーションを遅らせて、ラケット面を斜めに当てなければいけません。
これが最初は難しく感じることが多いです。1つの方法として、薄いグリップにズラすと良いでしょう。コンチネンタルグリップならばバックハンドイースタンなどにズラすということです。薄いグリップの方がスピンサーブも打ちやすくなるのでおすすめです。
このようにすれば同じようにスイングしてもグリップが薄いのでラケット面が斜めになりやすくなります。
打点を少し後ろにする
スピードのあるサーブを打つために、トスを前に上げて体重を乗せて打つことがあります。しかし、あまりトスが前すぎると打点が前になりやすく、同じようにスイングしてもインパクトが遅れ、プロネーションを使いすぎてラケット面がフラットに当たってしまうことが多くなりやすいです。
フラットサーブに比べると、スライスサーブでは打点を下げ、少し後ろ側(ベースラインよりも外側)に打点をずらすことで、プロネーションによってラケットがフラット面になる前にボールを打つことができます。つまり、ラケット面を斜めにしてボールに当てやすくなるわけです。
ラケットの左寄りに当てる
スライスサーブを打つ時にラケットのスウィートスポットよりも(右利きの場合は)少し左側に当てるようにすると、スライスにキレが生まれやすくなります。左利きの場合は、左右反対になりますので少し右側に当てます。
これはやってみるとすぐに違いがわかります。なぜそうなるのかということを説明する方が少々難しいです。テニスのフルスイングしてボールを打つ時は、インパクトで大きな力がラケットからボールに伝わります。それはもちろんラケットにも大きな衝撃が加わることになります。
最近はハイスピードカメラなどでインパクトの状況を撮影して、力の伝わり方などについての研究も深く行われています。スウィートスポットから少しズレて(右利きの場合)左側にボールを当てると、ラケットの中心線からズレているのでラケット面がインパクト時に左側に動きます。これがスライス回転を高める効果があると考えられます。
同様なことはトップスピンなどの他の回転を強くかけるショットでも言えます。つまり、トップスピンならばラケットを下から上にスイングし、ボールを捉えます。インパクトでラケットスウィートスポットで当てるよりも少しラケットの下(*右利きのフォアハンドのラケット面内では右側)に当てると回転がかかりやすくなるということです。
これらを適宜試し、自分のスライスサーブを完成させましょう。
この「ラケットの左寄りに当てる」方法について、以下の鈴木貴男氏による動画でわかりやすく紹介されています。
数あるスライスサーブの打ち方に関する動画の中でももっともオススメの優れた動画です!
ガットをポリエステルにする
テニス用具の進歩により、テニスが以前と変わってきているという話はよく耳にします。ある程度のテニスの技術が習得できたら、これを活用しない手はないでしょう。
具体的には、まずはポリエステルのガット(ストリングス)を試してみましょう。
テニスでボールに回転をかける仕組みとしては、ストリングスのスナップバックがあるとされています。そのような観点から、ストリングスの開発を進められていますので、実際に使ってみるとその効果が実感できると思います。
しっかりとスイングできるならば、ポリエステルのストリングスはボールに回転がかけやすく、スライスサーブにも効果があるでしょう!
まとめ
キレのあるスライスサーブの打ち方について紹介しました。ワイドにキレて行って相手が追いつけなかったり、ボディに食い込んで打ち損じたりするようなスライスサーブを目指しましょう。
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