テニスのガット(ストリング)を張る時のテンションをどのように決めれば良いのか?初級者はわからなくて普通ですし、中級者でもよくわからない人の方が多いでしょう。
テニスのガットのテンションとショットとの関係、ガットの素材とショットとの関係は、近年も研究が進められ、いろいろなことが明らかになっています。しかし、それはすべてが完全に解明されたということではなく、重要なことが1つずつ地道に明らかになりつつあるということです。
都市伝説的な根拠不明なアドバイスも含めて、いろいろなアドバイスがある中で、一般の中級者が的確にガットを選んで張ることは難しいことのように感じます。プロではない一般のテニスプレーヤーのためのガット選びと張り方について紹介します。
*中級以上で、トップスピンやスライス回転をしっかりかけられるレベルならば、ポリエステルガットを試してみることをオススメします!
しっかりボールに食い込んで回転がかかりやすいことが実感できるでしょう!
テニスのガットのテンションは?ナイロンとポリエステルはどっち?
テニスのガットとショットとの関係を科学的に解明することは簡単ではありません。ガットの種類も非常に多いですし、選手の打ち方も個性があります。同じ選手のショットでも緩急や回転数を変えるなどのバリエーションもあります。
さらに言えば、ラケットのガットのテンションもボールを打つ度に下がりますし、時間とともに下がっていきます。ボールの反発力も同様で、ボールを打つ度に中に充填されている窒素ガスが抜け、気圧が下がり、ボールの反発力が下がります。このような複雑さがガットとショットとの関係を解明する研究を困難なものにしています。
したがって、科学的な研究では、ラケットを固定して、正確にボールのスピードとラケットに当たる角度をコントロールして、ラケットのスウィートスポットに繰り返し当てて実験をするような、「できるだけ単純化した条件」でデータをとります。
また高速度カメラで、これまでは捉えられなかったようなインパクト時のガットの動きも画像で確認できるようになり、新しいことがわかってきました(*参考文献:月刊テニスマガジン2019年10月号)。
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1.ガットのテンションが下がってもガットの反発力はほとんど変わらない
2.ガットのスナップバック現象がスピンに影響している
3.ポリエステルの方がナチュラルおよびナイロンよりもスピンがかかりやすい
4.多数回強打してガットにノッチができるとスピンがかかりにくくなる
これらのことは、科学的に明らかになったことですが、極端な考え方にならないように補足すると、これらがすべてではなく、他にもラケットの特性やストリングパターンなど、ショットに影響を与える要素はいろいろあります。もちろん選手のスイングなどが直接的にスピン量やスピードに大きな影響を与えます。
したがって、これらのことを参考にしてガットの選びやテンションの設定に役立てるということであり、必ずしもこれらのことだけで決める必要はありません。実際、このような研究成果が明らかになる以前からトッププロではポリエステルガットの使用が主流になっています。2004年時点のUSオープンで世界ランク上位20名の男子選手が使用したガットの84%はポリエステルでした。1995年はナチュラルが69%、ナイロンが26%でしたので、急激にポリエステルのガット使用者が増えていることがわかります。
前述の「ポリエステルの方がナチュラルおよびナイロンよりもスピンがかかりやすい」ということが明らかになる前に、トッププロは感覚的に知っていたのでしょう。したがって、繰り返しになりますが、前述の明らかになったことだけでなく、自分がボールを打って確認したことも重要な情報ですので、それらを総合的に判断して決めた方が良いでしょう。
中級者のテニスのガットの選び方
ここまで近年のガットの研究から明らかになったことやプロの動向など解説しましたが、プロではない一般のテニスプレーヤーの事情を考慮して、(ある意味いい加減と言われるかもしれませんが)現実的なガット選びについて紹介します。
まず一般の中級者にとって、テニスのガット代と張替え代は案外大きな経済的な負担です。生涯スポーツとして長くテニスを楽しむためには、できるだけ経済的な負担も小さくしたいです。
トッププロの場合、試合前に数本のラケットを用意し、それらに試合ごとにストリンガーがガットを張ってくれます。テンションをいくつか変えて張り、状況によって使い分けますし、1セットごとにラケットを交換することも珍しくはありません。
しかし、一般の中級者にそのような真似はできませんし、週に1回テニススクールに通ってレッスンを受けているような使用時間がであれば、そこまでする必要はありません。
ガット代を安くするならば、高価なナチュラルガットを選択する必要はありません。価格的にはポリエステルガットかナイロンガットが候補になるでしょう。
「ガットのスナップバック現象がスピンに影響している」とはどういうことなのでしょうか?ガットのスナップバックとは、トップスピンを打つ時にラケット面が下から上方向に動きならがボールをインパクトすると、縦方向に張られたガットが下方向に押し下げられ、それが戻る現象のことです。これがボールにスピン回転をかける要素になっているとされています。
「ポリエステルの方がナチュラルおよびナイロンよりもスピンがかかりやすい」というのは、ポリエステルガットは他のガットに比べて、硬く、縦糸と横糸の交差点の表面がすべりやすいためです。しかし、ナイロンガットでは極端にスピンがかからなくなるというわけでもありません。
またトッププロが試合をすると、何度も強打しますので、縦糸と横糸の交点部分が凹む「ノッチ」ができることが多いです。これができてしまうと、ガットが食い込んでスナップバックが起こりにくくなり、スピンがかかりにくくなります。一般の人でもこのような状態になったら張り替えた方が良いでしょう。
ナイロンガットにくらべて、ポリエステルガットはかなり打感が硬いです。テニスエルボーが心配な方は、避けた方が良いかもしれません。またあまりハードヒットしないようなプレースタイルの方ならば、むしろナイロンガットの方がやりやすい可能性もあります。
とりあえず安いモノフィラメントのナイロンガットを使ってみて、その時の打感とボールの飛びおよびスピンのかかりやすさを基準として、いくつかの種類のものを試しながら好みのものを選ぶと良いでしょう。
中級者のテニスのガットのテンションは?
「ガットのテンションが下がってもガットの反発力はほとんど変わらない」ということが明らかになっています。よりスピードの遅いボールを、ゆっくり打つ時に少々低いテンションの方が飛びが良いという程度の差です。これは極端に高いあるいは低いテンションではなく、適正テンションの範囲内での話です。
プールに普通のプールサイドから飛び込んでも水面はそれほど硬くなりませんが、飛び込み台など高いところから飛び込むと、着水時のスピードが高くなるため、まるで硬いものにぶつかるような衝撃になります。これと似たようなもので、トッププロのようにスピードボールを強打すると、いわゆる「ボールを潰す」インパクトになり、多少のテンションの違いなど大差無いわけです。しかし、ウォーミングアップのボレーボレーなどのように、緩いボールをゆっくり打つ時などはテンションが低い方が少々飛びが良いです。
ポリエステルガットの特性として、張り上がり後、短時間で急激にテンションが下がります。そのためトッププロは試合直前に張ってもらい使用します。週に1回テニススクールでレッスンをするような頻度では、仮に張り上がり直後に使用できたとしても、次に使用する時にはかなりテンションが下がってしまっています。
テンションの下がり方はナイロンガットの方が緩やかです。しかし、時間とともに下がり続けることには変わりありませんし、ボールを打つ度にテンションは下がります。
これらのことを考えると、一般の中級者があまりテンションにナーバスになってもしょうがないように思います。むしろ、その時の状況に応じてボールの飛びやスピンの掛かり具合をチェックし、ショットをコントロールできるようにする意識を持った方がよいでしょう。
したがって、それぞのラケットの適正テンションの範囲内で張れば良いと思います。そして打感などをチェックしながら、多少調整してみましょう。
まとめ
テニスのガットの選び方と張り方について紹介しました。一般の中級者ならば、できるだけ費用を節約することも考えましょう。ちなみに私は安いナイロンガットを張って、費用節約のためにできるだけ張替え間隔を伸ばすチャレンジをしています。
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