本記事はテニスの中級程度のレベルの方を想定して記しています。つまり、中級から上級にステップアップするための技術解説です。
特に週に1回程度テニススクールでレッスンを受けている社会人の場合、十分な練習時間を確保できないことが多く、少しでも正しい知識を習得して、限られた練習時間を正しい努力に使うことが重要です。
そのような一般のテニス愛好家にとって練習が不足しがちなサーブアンドボレーのコツについて紹介します。
またテニスの大会に出場するようになると、サーブアンドボレーのパターンを持っているかいないかで勝率にも勝率にも差がつくでしょう。積極的に取り組んでレベルアップしましょう!
*サーブアンドボレーを習得したい方に最適なDVDが、鈴木貴男氏による解説動画です!
テニスのシングルスでサーブアンドボレーは時代遅れ?つまらない?
テニス界のレジェンドであるピート・サンプラス全盛期に比べると、「サーブアンドボレー」を主体とするプロテニスプレーヤーは大幅に減り、ほとんど見かけなくなりました。
テニスの専門誌などでその原因としてよく指摘されているのは、ラケットの進化によって、ベースライン付近から強力なストロークが打ちやすくなったので、以前よりもストローカー有利になったことです。
代表的なサーブアンドボレーヤーであったピート・サンプラスの全盛期は、多くのポイントがサーブアンドボレーだけで決まってしまい、あまりにもサンプラスが強かったために、「つまらない」という感想もよく聞かれました。
プロスポーツであるテニスにとって、観客が試合を観て「つまらない」と感じるか、それとも「おもしろい」と感じるのかは、極めて重要です。単純に試合会場に来る観客の入場料だけでなく、世界中に配信する放映料やスポンサーからのお金など、ビジネス的にも重要なことだからです。
そのため全米オープンでは、サーブアンドボレーヤーが不利になるように、コートサーフェイスの表面を修正し、いわゆる「遅い」コートに変更したと言われています。
フェデラー以前では、テニスのグランドスラム獲得数で世界1位であったサンプラスでさえ、クレーのフレンチオープンでは決勝に進むこともできませんでした。つまり、それだけサーフェイスが遅くなるとサーブアンドボレーヤーは不利なのです。
以上はテニスのトッププロの話ですが、テニスの中級レベルの愛好家にとってサーブアンドボレーは時代遅れなのでしょうか?習得する価値はないのでしょうか?
実は中級レベル相手ならば案外効果的な攻撃パターンの1つです。中級レベルのリターンならば、しっかりボレーヤーの足下に沈めるボールを打つことも難しいですし、前に出てきた相手の横をパスで抜くことも簡単ではなく、サーバーが前に出てくるだけでプレッシャーでミスすることも多くなります。
プロでも、サーブアンドボレーをあまりしないプレーヤーでも、ストロークで相手を押し込んで、返球が甘くなると判断した場面では前に詰めてボレーで決めるシーンもよく見かけます。
サーブアンドボレーを練習しておけば、そのようなチャンスで前に出てボレーで決められることも増えていくでしょう。攻撃パターンとして持っておいて損はありません。
サーブアンドボレーのコツ!シングルスでは?
狙ったコースにサーブが打てることが前提
まず大前提として、サーブを打ってからコート内に入り、前に詰めてスプリットステップをし、ボレーするので、確率よくサーブを入れられることが必要となります。
さすがに入れるだけの甘いサーブで、相手に好き勝手にリターンエースを決められるような状況では、サーブアンドボレーは無理です。
相手のバック側やボディなどの狙ったコースにサーブを入れられて、スピン回転あるいはスライス回転をかけて、簡単には打ち込まれない程度のサーブを打てるようになりましょう。
これはサービスエースを取れるようになるというレベルではなく、相手に簡単に打ち込まれないというレベルです。
サーブアンドボレーでは、ある程度相手のリターンのコースを予測することが重要です。それを可能とするためにも、まずは自分がどのような回転のサーブをどのコースに入れるのかを決めて、狙い通りに高い確率で打てることが求められるわけです。
中級レベルならば、バックハンドがフォアハンドよりも苦手な人が多いですし、回転がかかったサーブがボディに来た時も案外打ちにくいです。そのようなサーブが打てれば、強烈なリターンを打ち込まれる確率は下がり、ボレーできるチャンスも増えます。
スプリットステップをして相手をよく見る
サーブを打った後に前に詰め、スプリットステップをして、相手の動きをよく見て、リターンに反応しなければなりません。
これがサーブアンドボレーの習得に取り組む人にとってはハードルになります。
人間の脳は、一度に一つのことしか考えられません。いろいろなことを考えているという方も、注意深く見れば、あることを考えている瞬間は一つのことだけ考えていて、短時間がそれを切り替えていることがわかるでしょう。
ここが重要なことで、まずサーブを確率よく狙ったコースに入れられるようにならないと、サーブを打つことだけに意識が集中してしまいます。そうすると打った後に前に詰めて、相手を見てリターンのコースを予測するということに意識を集中することがワンテンポ遅れがちになります。
時間にすると0.1秒程度なのかもしれませんが、相手のリターンを見るためには、その違いが効いてくきます。相手がどのようにリターンを打つのかを打つ前から観察できないと、飛んできたボールを見てから反応するだけになり、ボレーが難しくなります。
サーブを打ってからできるだけ早く前に詰めることに意識が集中していると、スプリットステップのタイミングが遅くなり、相手のリターンが戻ってきた時に準備が遅くなってしまうことが多くなります。
また前に走っていってスプリットステップをして止まらないといけないのですが、早く前に詰めることに意識がいっていると、止まることも難しくなりますし、試合中にそれを繰り返すことで膝への負担が増えます。
さらにスピードを上げて前にダッシュして急停止しようとすると、前につんのめる、あるいは後ろ体重になることが多く、次のボレーにうまくつなげにくくなります。
あまり無理のないスピードで前に詰め、相手を見ながら早めにスプリットステップをして、バランスよく次のボレーにつなげることが重要です。
そのため、スプリットステップするポジションをあまり前にすることにこだわらず、サービスのラインよりもかなり手前で良いでしょう。
相手のリターンも無理にローボレーするのではなく、余裕を持ってハーフボレーするぐらいの間が欲しいです。
ところが十分に習得できていない段階では、前に詰めていってボレーをすることは案外難しいものです。私も何度もボレーミスして、「前に出ない方がよいのでは?」と思うことも何度もありました。
これが超えなければならない壁です。ここで挫けてしまっては永遠に習得できません。
まず知っておいた方が良いのは、前に大きく踏み込みながらボレーをするのは難しいということ。これはボレストの時などに試してみるとよくわかりますが、ストロークのスピードがある程度あると、前に踏み込んでボレーするのは難しく、キャッチボールでボールをキャッチするように、しっかりボールを迎え入れてボレーすることが基本です。
初級者がボレーの威力を出そうとして踏み込んで打とうとすることがありますが、ある程度ストロークのボールスピードが出てくると上手く行かなくなり、ミスが増えて悩むことがあります。そのような経験を乗り越えて来ている中級者ならば、ここで書いた程度の説明で理解できると思います。
ダブルスの並行陣の後衛のように、最初からそのポジションに居て、来たボールに対応するようにすれば格段にミスが減らせるでしょう。
シングルスのボレーはオープンコートへ打つ
シングルスでサーブアンドボレーをした時に、ボレーを打つコースは基本的にはオープンコートです。ダブルスに比べて、コートにオープンスペースが生まれやすいので、素直にそこへ打つことが効果的です。
ダブルスと異なり、必ずしもボレーに威力が無くても、オープンコートに打てば決まることが多いです。また相手がベースライン付近にいるならば、ドロップボレーもかなり有効です。
サーブアンドボレーでは、いわゆる「3球攻撃」でポイントが決まることが多く、シングルスでは体力温存にも役立ちます。またボレーで一発で決まらなくても、しっかりオープンコートに打って、相手を走らせることができれば、試合では相手の体力を削ることに繋がるでしょう。
以上のサーブアンドボレーを確認できる上質な動画がこちらです!
サーブアンドボレーのコツ!ダブルスでは?
プロでも、シングルスに比べるとダブルスの方が圧倒的にサーブアンドボレーをするプレーヤーが多いです。というよりも、トップレベルのダブルスプレーヤーならば、サーブアンドボレーができなければなりませんし、必須です。
ダブルスでは、味方の前衛が守っているので、前衛の守備範囲へのリターンは前衛に任せればよく、サーブの後に自分でカバーすべきエリアはかなり限定されます。また平行陣になった方が相手へプレッシャーもかけやすいです。これらがダブルスでサーブアンドボレーが多用される理由でしょう。
サーブアンドボレーの時に、まずしっかりと狙ったコースにサーブを入れることが前提であることはシングルスと同様です。
次に注意すべきことは、前衛の頭上を越えるロブリターンです。深さにもよりますが、通常は前衛の頭上を越えたら後衛がカバーすべきですので、サーブアンドボレーで前に出ていても途中で判断してカバーに行かなければなりません。
したがって、相手がロブリターンをしてくるのかどうか観察する必要があります。
相手がクロスコートにリターンしてきた時に、基本的にはサーブアンドボレーすることになります。この時に注意しなければならないのは、相手前衛に捕まらないようにすること。
ダブルスでは、オープンコートがあまりなく、ボールが浮かないようにして相手に捕まらないように狭いコースを通さなければなりません。
またファーストボレーは相手前衛のポーチで狙われやすいため、相手前衛がポーチに動くかどうか注意し、ポーチしてきたら逆を突くなどの対応をする必要もあります。
必ずしも長いボレーを打つ必要は無く、ゆるいボレーでもとにかくボールが浮かないようにすることが重要です。そして相手のボールが浮いてきたら決めに行くチャンスになります。
テニスのフォアハンドの打点の距離感についてこちらの記事で紹介しています。
コメント